あおいいぬ

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劇場版昼顔 感想 ※ネタバレ有り


劇場版昼顔を観ました。
ネタバレには直接関わらない感想を見たり聞いたりしていたのであらかじめ覚悟してはいたんですが、すごい映画でした。
物語の運びから、展開を予想しながら観て滅茶苦茶ニコニコしていましたね…。

展開がジェットコースターすぎて、ホタルの幼虫観察をしていた北野先生を紗和が見つけた辺りから「夢オチでも許されるのでは?」と思うレベルです。

しかし期待を裏切らないどころか期待以上の構成の素晴らしさでした。
劇場版昼顔を観ると決心してドラマ版を一気見してよかったです。
ドラマでお馴染みのBGMを「ここで使うのか!!」と感動させられっぱなしでした…。

不倫に振り回される人々の気持ちを他の人間を通じて知り被害者面から加害者の自覚を持ったところが、ドラマ版からの繋がりを感じ構成として最高です。
「私たち何も悪いことをしてないよね?」から「幸せになろうなんて思いません」という台詞に紗和の吹っ切れっぷりが伝わります。
人を愛する気持ちに罪はないですが、結婚という契約を交わした以上一夫多妻制を敷いている国の法律に従い生活している以上、不倫は悪いことです。
「悪いことをしている」「悪いことを何もしていない」などと開き直られ堂々と生活していたら腹立たしいですが、不倫に振り回され生活も心も振り回された人たちの気持ちが見えてからハッキリとした態度になった紗和はかっこいいなと思いました。

ドラマ版で利佳子が言っていた「不倫はバレることが罪なのよ」という台詞、この作品を観るとそう思わざるを得ないところもあるんですが、人を裏切ったという気持ちは一生ついて回るし、その事実に対する評価はどこまでもついて回るんですよね。
だから乃里子も最後の最後で許せなくなっちゃったのかなと思います。
個人の解釈ですが、北野先生の誠意を見て北野先生の幸せを願い身を引くことが出来たのに北野先生の誠意ある人柄に触れれば触れるほど裏切りに対する納得がいかなくなっちゃったのではないかと思いますね…。
一生愛し抜くことを契約したのに裏切られたわけですから。
自分より紗和が優っている理由がひとつでもあれば良かったのに、北野先生の悪意の無さと優しさ、本当に残酷ですね。
わからないけれど好きなんだじゃないんですよ。
過度な優しさは保身に見えかねないのが怖い。

でも最後の最後に北野先生と永遠になれたから乃里子は本当にすごい女ですね…。
でもそれと対になるように、紗和は乃里子がずっと欲しかった北野先生の子供を手に入れるんですよね。
本当に構成がお上手!!

前述しましたが展開がジェットコースター並みで驚きの展開が目白押しでちょっとやり過ぎじゃない?と思う部分もあるのですが、実際にやりたいのは再開バレだとか喧嘩だとか事故死だとかではなく、そういう場面に出くわした時に登場人物はどういう感情になりどういう行動を起こすのか?という部分だと感じたので、急すぎる展開でもすんなり受け入れられました。
勿論受け入れられるのも、「この人物ならこうする」という説得力というか納得感がすごいからなんですよね。
乃里子が不倫を許せない→好きな人の幸せの為なら身を引く→最後の最後で裏切りに納得が出来なくなった、っていう感情の運びが本当に秀逸です。
一人の人間に存在する感情は一つではないし同時にいくつも存在していて、それが状況やコンディションで大きさや優先順位が変わってくるという描き方が本当に上手で…。
とにかく「こういう状況に陥ったらこの人物はどう行動するか?」という観点からの攻め方が滅茶苦茶上手いです。とても気持ちいい。

最後の「女は自分が出来なかったことをやってのけた女が一番嫌いなのよ」という台詞が物語全体に効きまくっていて感服です。
その理論でいくと乃里子は紗和のことを好きになれるわけがないんですよね…本当に良い…。

不倫を軸に人間の感情をあらゆる舞台装置を使いこれでもかという程描いた劇場版昼顔、最高に面白かったです。